2547年4月のとある日(1) 「オーキット」

ナーさんの車は10分ほど走ったところでガス欠、ガソリンを出前してもらいました。とても呑気な人達だから不測の事態に備えてガソリンスタンドの電話番号を記録していたとは思えず何故番号を知っているのかと携帯をもっていた女性に聞いてみたら、たまたま近くでガソリンスタンドを営む友達がいたとのことでした。もし違う場所だったら通りすがりの車に助けを求めるのだそうです。



車よりも牛の往来の方が多そうだから、それはさぞかし難儀なことだろうと心配性の僕は考えたりするのですが彼女はそんなことより、道路脇の木が気になってしょうがない様子。とてもせっかっちな人達だから隣り街まで仕事の打ち合わせに行く途中だというのに気になり出したらもう止まらないようです。



彼女が指した木には何も美味しそうな物はなってませんでした。よく聞いてみると”オーキット”が欲しいとのこと。木の高いところにこびり着いているそのオーキットなるものを採ろうと皆で木ぎれを投げたりしましたが落ちてこず、結局ナーさんが木に登らされるはめになりました。



ナーさんが採って来た”オーキット”は今、彼女ご自慢の植物園にぶら下げられています。

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